【照会要旨】
当社(A社)は、当期(X4期)において、A事業及びB1事業を行う法人であり、中小企業者(措法42の4七、措令27の4
)に該当します。
中小企業者のうち、適用除外事業者に該当するものは中小企業技術基盤強化税制等を適用できないこととされており、この適用除外事業者は、事業年度ごとに判定することとされ、その判定しようとする事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える場合のその超える法人をいうこととされています(措法42の4八)。このため、当社が当期に当該税制等の適用を検討する場合には、適用除外事業者の該当性を検討する必要があります。
そこで、当社の過去3期(X1期~X3期)の所得金額を把握する必要がありますが、過去3期に組織再編成等の一定の事由がある場合には調整計算することとされており、当社はX2年7月1日に分割(以下「本件分割」といいます。)により完全支配関係があるB社からB1事業の移転を受けています。X1期からX3期までの各社の所得金額は下図のとおりとなります。
この場合、当社(A社)は、適用除外事業者に該当するのでしょうか。
なお、当社及びB社は、(X4.1.1時点で)設立後10年超の内国法人(いずれもグループ通算制度を適用している法人ではありません。)であり、X1期からX3期までの各事業年度で法人税法第80条の欠損金の繰戻しよる還付の規定の適用を受けていません。
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【回答要旨】
適用除外事業者に該当しません。
(理由)
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1 適用除外事業者の判定における所得金額の計算は、原則として、中小企業技術基盤強化税制等の中小企業向けの租税特別措置の適用に際し判定をしようとする法人(以下「判定法人」といいます。)のその適用を受けようとする事業年度(以下「判定対象年度」といいます。)開始の日前3年以内に終了した各事業年度(以下「基準年度」といいます。)の所得の金額の合計額を各基準年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算した金額(以下「判定所得金額」といいます。)とされています(措法42の4
八)。この判定所得金額が15億円を超える場合、その判定法人は、適用除外事業者に該当し、中小企業技術基盤強化税制等の適用を受けることができません。
-
2 この判定所得金額については、組織再編成がある場合などは、一定の調整を行うこととされています(措法42の4
八、措令27の4
~
)。具体的には、特定合併等に係る合併法人等に該当する場合には、判定所得金額は、次の算式で計算することとされています(措令27の4
四、
二イ、三)。
-
3 合併法人等(注1)との間に支配関係がある法人を被合併法人等(注2)とする合併等(注3)で事業の移転するもののうち、基準日(注4)から判定対象年度開始の日の前日(合併にあっては、判定対象年度開始の日)までに行われたものは、上記2の「特定合併等」に該当することとされています(措令27の4
一ロ)。
-
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(注1) 合併法人等…合併法人、分割承継法人、被現物出資法人、譲受け法人(事業の譲受けをした法人をいいます。)又は承継法人をいいます(措令27の4
二)。
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(注2) 被合併法人等…被合併法人、分割法人、現物出資法人、移転法人(譲受け法人に対して事業の移転をした法人をいいます。)又は被承継法人をいい、公共法人を除きます(措令27の4
三)。
-
(注3) 合併等…合併、分割、現物出資、事業の譲受け又は特別の法律に基づく承継をいいます(措令27の4
一)。
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(注4) 基準日…判定対象年度開始の日から起算して3年前の日をいいます(措令27の4
五)。
-
(注1) 合併法人等…合併法人、分割承継法人、被現物出資法人、譲受け法人(事業の譲受けをした法人をいいます。)又は承継法人をいいます(措令27の4
-
4 また、上記2の(算式)の「合併等調整額」とは、各対象特定合併等に係る各被合併法人等ごとに算出される次の(ⅰ)及び(ⅱ)の金額の合計額を全て合計した金額をいうこととされています(措令27の4
三ロ)。
- (ⅰ) 対象特定合併等に係る修正基準期間(判定対象年度開始の日又は対象特定合併等の日のいずれか遅い日から起算して3年前の日からその対象特定合併等の日の前日までの期間をいいます。)内に終了したその対象特定合併等に係る被合併法人等の各事業年度の所得の金額の合計額
- (ⅱ) その対象特定合併等に係る被合併法人等の設立の日を含む事業年度に対象特定合併等が行われた場合のその事業年度の所得の金額
-
5 上記4の「対象特定合併等」については、一定の方法により特定合併等に係る被合併法人等の事業年度をその合併法人等の事業年度とみなしたならば判定法人の事業年度とみなされることとなる事業年度を有する各被合併法人等のそのみなされることとなる基因となった特定合併等をいうこととされています(措令27の4
四)。
-
この一定の方法は、その特定合併等について、その特定合併等に係る被合併法人等のその特定合併等の日(合併にあっては、合併の日の前日)以前に開始した各事業年度をその特定合併等に係る合併法人等の事業年度と順次みなしていく方法です(措令27の4四イ~ハ)。
- 6 本件では、判定法人となる貴社に上記2の(算式)の「合併等調整額」が生ずる場合にその金額がいくらとなるかが問題となります。このため、上記4の(ⅰ)の金額と(ⅱ)の金額が生ずるのか検討することが必要となり、その際、本件分割が「対象特定合併等」に該当するか検討することとなります。この「対象特定合併等」については、上記5のとおり、「特定合併等」に該当することが前提とされていますので、最初に本件分割が「特定合併等」に該当するか検討します。
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本件分割は、基準日(X1.1.1)から判定対象年度開始の日(当期の開始の日:X4.1.1)までに行われた分割でB社(被合併法人等)と貴社(合併法人等)との間に完全支配関係があるため上記3の「特定合併等」に該当します。 -
そして、特定合併等に該当する場合には、上記5のとおり、その特定合併等に係る被合併法人等のその特定合併等の日以前に開始した各事業年度をその特定合併等に係る合併法人等の事業年度とみなすこととなります。本件では、本件分割(特定合併等)に係るB社(被合併法人等)の本件分割の日(X2.7.1)以前に開始した各事業年度(X1期及びX2期)を貴社(合併法人等:判定法人)の事業年度とみなすこととなるため、本件分割は上記5の「対象特定合併等」に該当することとなります。 -
そうすると、上記2及び4の「合併等調整額」は、各対象特定合併等(本件分割)に係る各被合併法人等(B社)ごとに算出される上記4(ⅰ)及び(ⅱ)の金額を合計して算出することとなります。そこで、本件分割について検討すると、上記4(ⅰ)の金額は、対象特定合併等に係る修正基準期間(判定対象年度開始の日又は対象特定合併等の日のいずれか遅い日(当期の開始の日:X4.1.1)から起算して3年前の日(X1.1.1)からその対象特定合併等の日の前日(X2.6.30)までの期間)内に終了した被合併法人等の各事業年度(X1期)の所得の金額の合計額(X1期のB社の所得の金額)の5億円となり、B社はX1期で法人税法第80条の規定の適用を受けておらず、上記4(ⅱ)の金額もないことから、本件分割に係る合併等調整額は5億円となります。 - 7 以上の点から、上記2の算式により貴社の判定所得金額を計算すると、〔(各基準年度の所得の金額の合計額(X1期の貴社の所得の金額10億円+X2期の貴社の所得の金額13億円+X3期の貴社の所得の金額15億円=38億円)- 法人税法第80条第1項の適用により還付を受けるべき金額の計算の基礎となった欠損金額に相当する金額(0円))+合併等調整額(本件分割に係る合併等調整額5億円)〕÷3=14.33…億円となり、15億円を超えないため、貴社(A社)は適用除外事業者に該当しません。
- 8 なお、当期にB社を判定法人とする場合で判定所得金額の計算では、分割における分割法人について該当する調整事由がないことから、その分割により移転した事業に係る所得に相当する金額を遡って減算するような調整は行わないこととなりますので、B社が本件分割により調整する所得の金額はなく、B社の判定所得金額は4.33・・・億円〔(X1期のB社の所得の金額5億円+X2期のB社の所得の金額5億円+X3期のB社の所得の金額3億円)÷36×12〕となり、15億円を超えないため、B社は適用除外事業者に該当しません。
租税特別措置法第42条の4第19項
租税特別措置法施行令第27条の4第18項~第22項
以上です。