【照会要旨】
3月決算法人である当社は、X0年10月にA国に所在する甲社を子会社化し、当社と甲社との間に特定支配関係(法令119の3二)が生じました。その後、X1年6月とX1年12月に甲社で剰余金の配当が決議され、当社は下表のとおり甲社からの配当をA国における通貨(A$)で受けました(当社はX2年3月期において他の法人から配当を受けていません。)。
なお、X1年5月とX1年11月における月平均の為替レートはともに95円/A$でした。
ところで、いわゆる子会社株式簿価減額特例(以下「本特例」といいます。)における適用が免除される金額基準として、法人税法施行令第119条の3第10項第4号では、対象配当等の額※1と同一事業年度内配当等の額※2の合計額が2,000万円を超えないこと(以下「本件金額基準」といいます。)が規定されています。
上表の配当効力発生日における為替レートで円換算した場合には、X2年3月期における配当受領額は2,050万円となりますが、X1年5月とX1年11月における月平均の為替レートで円換算した場合には、1,900万円となります。当社が、この配当効力発生日の属する月の前月平均の為替レートで継続して円換算を行い収益計上する場合、X2年3月期の申告においては本件金額基準が適用され、本特例の適用が免除されると解して差し支えないでしょうか。
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※1 対象配当等の額、受ける配当等の額から完全支配関係内みなし配当等の額(他の法人にみなし配当事由(当該他の法人の株式等を有する内国法人において法人税法第61条の2第17項の規定の適用があるものに限ります。)が生じたことに基因して配当の金額とみなされる金額をいいます。)を除いた金額をいいます(法令119の3
)。
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※2 同一事業年度内配当等の額…対象配当等の額を受ける日の属する事業年度開始の日(同日後に他の法人の株式等を有する内国法人が当該他の法人との間に最後に特定支配関係を有することとなった場合には、その有することとなった日)からその受ける直前の時までの間に当該内国法人が当該他の法人から配当等の額を受けた場合(当該配当等の額に係る決議日等において当該内国法人と当該他の法人との間に特定支配関係があった場合に限ります。)におけるその受けた配当等の額(完全支配関係内みなし配当等の額を除きます。)をいいます(法令119の3
)。
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【回答要旨】
貴見のとおり解して差し支えありません。
(理由)
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1 本特例では、親法人が一定の支配関係にある子法人から受ける配当等の額(対象配当等の額)がある場合において、その対象配当等の額とその対象配当等の額を受ける日の属する事業年度開始の日からその受ける直前までに受けた他の配当等の額(同一事業年度内配当等の額)との合計額が、これらの配当等の額に係る各基準時の直前において有するその子法人の株式等の帳簿価額のうち最も大きいものの10%相当額を超えるときは、その対象配当等の額に係る基準時の直前におけるその子法人の株式等の帳簿価額からその対象配当等の額のうち益金の額に算入されない金額(法人税法施行令第119条の3第10項に規定する益金の額に算入されない金額をいいます。)を減算した金額を基に、その基準時における一単位当たりの帳簿価額を計算することとされています(法令119の3
、119の4
)。
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2 本特例は、本件金額基準(対象配当等の額と同一事業年度内配当等の額の合計額が2,000万円を超えないこと)を満たす場合には、適用を免除することとされています(法令119の3
四)。
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また、法人税基本通達2-3-22の7では、法人が法人税法施行令第119条の3第10項第2号、第11項及び第14項の規定の適用を受ける場合において、他の法人又は同項に規定する関係法人が外国法人であるときにおけるこれらの規定の計算の基礎となる金額の円換算については、当該計算の基礎となる金額につき全て外貨建ての金額に基づき計算した金額について円換算を行う方法又は当該計算の基礎となる金額につき全て円換算後の金額に基づき計算する方法など、合理的な方法により円換算を行っている場合には、これを認めることとされていますが、本件金額基準の規定(法令119の3四)が記載されていませんので、本件金額基準の適用を検討する場合にどのように円換算するのか疑義が生ずるところです。
- 3 この点、法人税法第61条の8第1項では、外貨建取引(外国通貨で支払が行われる一定の資産の販売等及び剰余金の配当その他の取引をいいます。)を行った場合には、その外貨建取引の円換算額は、その外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額とすることとされ、貴社が甲社からA国の通貨で受領する剰余金の配当は外貨建取引に該当します。このため、外貨建取引に該当する剰余金の配当が本件金額基準に該当するかは、この法人税法第61条の8第1項の方法により判定することとなります。そして、法人税基本通達13の2-1-2(注)2では、外貨建取引の円換算について、継続適用を条件として、取引日の属する月の前月の平均相場のように1月以内の一定期間における電信売買の仲値による円換算の方法も認められており、貴社の甲社からの剰余金の配当の円換算方法はこの方法に該当します。この場合、貴社の甲社から受ける剰余金の配当の円換算額は1,900万円となり、本件金額基準である2,000万円を超えないことに該当するため、貴社は、X2年3月期において本特例の適用が免除されます。
法人税法第61条の8第1項
法人税法施行令第119条の3第10項
法人税基本通達2-3-22の7、13の2-1-2
以上です。