【照会要旨】
法人税法第2条第29号の2に規定する法人課税信託(以下「法人課税信託」といいます。)に該当していた受益者(受益者としての権利を現に有するものに限ります。ただし、信託の変更をする権限を現に有し、かつ、その信託の信託財産の給付を受けることとされているもの(受益者を除きます。)で受益者(受益者としての権利を現に有するものに限ります。)とみなされる者を含みます。以下「受益者等」といいます。)が存しない××信託(以下「本件信託」といいます。)について、受益者として当社が指定され、当社が本件信託の受益者としての権利を有することとなりました。
法人課税信託に該当する場合は受託者を納税義務者として、信託の信託資産等及び固有資産等ごとに、それぞれ別の者とみなして、法人税が課されることとされています(法法4、4の2
)。
受益者等が存しない信託の設定時に受託法人(法人課税信託の受託者である法人をいい、その受託者が個人である場合にはその受託者である個人をいいます。以下同じです。)に対して、法人税法上、その信託財産の価額に相当する金額の受贈益が課されているところ(法法22)、その受益者等が存しない信託に受益者等が存することとなったことにより、その信託が法人課税信託に該当しないこととなった場合には、その信託に係る受託法人はその受益者等に対しその信託財産に属する資産及び負債のその該当しないこととなった時の直前の帳簿価額による引継ぎをしたものとして、その受託法人の各事業年度の所得の金額を計算することとされ(法法64の3
)、また、受益者等である法人(以下「受益法人」といいます。)は、その信託財産に属する資産及び負債の帳簿価額による引継ぎを受けたものとして各事業年度の所得の金額を計算することとされています(法法64の3
)。
この点、居住者がその引継ぎを受けた場合は、その引継ぎにより生じた収益の額をその居住者のその引継ぎを受けた日の属する年分の各種所得の金額の計算上総収入金額に算入しない(所法67の3)ことが規定されていますが、法人がその引継ぎを受けた場合は、その信託財産に属する資産及び負債のその帳簿価額による引継ぎを受けたものとして各事業年度の所得の金額を計算することと定められているのみで、居住者がその引継ぎを受けた場合のように益金の額に算入しない旨の規定は定められていません。
当社が受益法人となる直前の受託法人から本件信託に係る信託財産を帳簿価額で引継ぎを受けるに当たり、当社に法人税は課されないこととなりますか。
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【回答要旨】
貴社が受託法人から引継ぎを受ける本件信託に係る信託財産については、貴社が受益法人となる直前の帳簿価額で引継ぎを受けるものであるため、これに係る収益の額又は損失の額が発生せず、貴社に法人税は課されません。
なお、その資産の帳簿価額からその負債の帳簿価額を減算した金額は貴社の利益積立金額に加算することとなります。
(理由)
1 受益者等が存しない信託は、法人課税信託とされ(法法2二十九の二ロ)、法人課税信託の受託者は、各法人課税信託の信託資産等(信託財産に属する資産及び負債並びにその信託財産に帰せられる収益及び費用をいいます。)と固有資産等(法人課税信託の信託資産等以外の資産及び負債並びに収益及び費用をいいます。)ごとに、それぞれ別の者とみなして、法人税が課税されることとされています(法法4の2)。
2 法人課税信託については受託法人に法人税が課されることとなるため、信託の設定時において受託法人に受贈益課税が行われることとなります(法法22)。
3 上記1の受益者等が存しない信託に受益者等が存することとなった場合、受益法人は信託財産に係る資産及び負債のその帳簿価額による引継ぎを受けたものとして所得の金額を計算することとされています(法法64の3)。
この点、法人税法第64条の3第3項において「引継ぎを受けたものとして」とされているのは、受益者等が存しない信託に受益者等が存することとなった場合、受益法人が受ける信託財産に係る資産及び負債の移転を「引継ぎ」を受けるとする構成によって、「取得」としないという考え方が採られたものであり、そして、法人税法上「引継ぎ」とされる場合には、原則として利益剰余金などの計算上の数額もその受益法人に引き継がれることとなることから、その移転を受ける資産等の貸借が一致するため、その移転においては収益の額又は損失の額が発生せず、課税関係が生じないことになります(すなわち、この場合、所得税法に規定する総収入金額に相当する金額(益金の額)が生ずることはありません。)。
なお、この場合、受益法人において、受益者等が存しない信託に受益者等が存することとなり法人課税信託に該当しなくなった時の直前の信託財産に属する資産の帳簿価額からその信託財産に属する負債の帳簿価額を減算した金額は利益積立金額の増額項目となります(法令9一リ)。
以上のことから、貴社が受益法人となる直前の受託法人から本件信託に係る信託財産を帳簿価額で引継ぎを受けるに当たり、貴社に法人税が課されないこととなります
法人税法第2条第29号の2ロ、第4条第1項、第4条の2第1項、第12条第1項、第22条第2項、第64条の3第2項、第3項
法人税法施行令第9条第1号リ
以上です。