【照会要旨】
次のとおりグループ通算制度開始前に資本関係が変遷している場合、当社の欠損金額は、法人税法第57条第8項の規定により通算承認の効力が生じた日以後に開始する各事業年度においてないものとされ、切り捨てられることとなりますか。
(事実関係)
1 P社を株式移転完全子法人とし持株会社を設立する株式移転を行っており(資本関係図3参照)、その持株会社を通算親法人としてその設立の日の属する事業年度を最初の通算事業年度とする通算承認を受けています(法法64の9)。
2 通算承認の効力が生じた日の5年前の日後に、P社は、これまで保有していなかったA社の発行済株式の全てを取得し、また、その後、当社を設立しています(資本関係図1参照)。
3 当社は、自社を合併法人とし、A社を被合併法人とする適格合併(以下「本件適格合併」といいます。)を行っています(資本関係図2参照)。なお、P社はA社の発行済株式の全てを本件適格合併の直前まで継続して保有しています。
4 次の(1)から(3)までのことを前提とします。
(1) 当社は、法人税法第57条第6項に規定する時価評価除外法人に該当します。
(2) 当社と持株会社及び当社とP社のいずれについても、通算承認の効力が生じた後に、共同で事業を行う場合として法人税法施行令第112条の2第4項に定める場合に該当しません。
(3) 当社は、通算事業年度の初年度に新たな事業を開始します。
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【回答要旨】
貴社の欠損金額は、法人税法第57条第8項の規定により通算承認の効力が生じた日以後に開始する各事業年度においてないものとされ、切り捨てられることとなります 。
(理由)
1 時価評価除外法人に該当する通算子法人の欠損金の切捨て
(1) 通算子法人で時価評価除外法人(注1)に該当する法人が、通算承認の効力が生じた日の5年前の日又はその通算子法人の設立の日のうちいずれか遅い日からその通算承認の効力が生じた日まで継続して通算親法人との間に支配関係がある一定の場合(次の(2)の場合)に該当しない場合で、かつ、通算承認の効力が生じた後にその通算子法人と他の通算法人とが共同で事業を行う場合として法人税法施行令第112条の2第4項に定める場合に該当しない場合において、その通算子法人が通算親法人との間に最後に支配関係を有することとなった日以後に新たな事業を開始したときは、その通算子法人のその通算承認の効力が生じた日以後に開始する各事業年度(その通算承認の効力が生じた日の属する事業年度終了の日後にその事業を開始した場合には、その開始した日以後に終了する各事業年度)において、その通算子法人の一定の欠損金額(注2)はないものとされ、切り捨てられます(法法57)。
(注1) 時価評価除外法人とは、グループ通算制度開始に伴い通算子法人となる法人の場合、その通算承認の効力が生じた後に通算親法人となる法人との間に通算親法人となる法人による完全支配関係が継続することが見込まれている場合におけるその通算子法人となる法人とされています(法法64の11二、法令131の15)。時価評価除外法人に該当しない場合、通算承認の効力が生じた日前に開始した各事業年度において生じた欠損金額はないものとされ、切り捨てられることとなります(法法57)。
(注2) 一定の欠損金額とは、次のイ及びロに掲げる欠損金額とされています。
イ その通算子法人の支配関係事業年度(通算子法人が通算親法人との間に最後に支配関係を有することとなった日の属する事業年度をいいます。以下同じです。)前の各事業年度において生じた欠損金額
ロ その通算子法人の支配関係事業年度以後の各事業年度において生じた欠損金額のうち法人税法第64条の14第2項に規定する特定資産譲渡等損失額に相当する金額から成る部分の金額として一定の金額
(2) 上記(1)の継続して通算親法人との間に支配関係がある一定の場合とは、次のイ又はロの場合のいずれかに該当する場合とされています(法令112の2)。
イ 通算子法人と通算親法人との間にその通算子法人について通算承認の効力が生じた日の5年前の日(以下「5年前の日」といいます。)から継続して支配関係がある場合(法令112の2一)
ロ 通算子法人又は通算親法人が5年前の日後に設立された法人である場合であって、その通算子法人と通算親法人との間にその通算子法人の設立の日又はその通算親法人の設立の日のいずれか遅い日から継続して支配関係があるとき(法令112の2二)
ただし、この「5年前の日後に設立された法人である場合」からは、次の(イ)から(ハ)までの場合は除かれています。
(イ) 他の通算法人との間に支配関係(通算完全支配関係を除きます。)がある他の内国法人を被合併法人とする適格合併で、次のいずれかのものが行われていた場合(当該他の通算法人が当該他の内国法人との間に最後に支配関係を有することとなった日(Bにおいて「支配関係発生日」といいます。)がその5年前の日以前である場合を除きます。)(法令112の2二イ)
A その通算子法人を設立するもの
B 支配関係発生日以後に設立されたその通算子法人を合併法人とするもの
(ロ) 他の通算法人が他の内国法人との間に最後に支配関係を有することとなった日以後に設立されたその通算子法人との間に法人税法第57条第2項に規定する完全支配関係がある当該他の内国法人(当該他の通算法人との間に支配関係(通算完全支配関係を除きます。)があるものに限ります。)でその通算子法人が発行済株式又は出資の全部又は一部を有するものの残余財産が確定していた場合(同日がその5年前の日以前である場合を除きます。)(法令112の2二ロ)
(ハ) その通算子法人との間に支配関係(通算完全支配関係を除きます。)がある他の法人を被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人とする法人税法第57条第4項に規定する適格組織再編成等で、次のいずれかのものが行われていた場合(その通算子法人が当該他の法人との間に最後に支配関係を有することとなった日(Bにおいて「支配関係発生日」といいます。)がその5年前の日以前である場合を除きます。)(法令112の2二ハ)
A その通算親法人を設立するもの
B 支配関係発生日以後に設立されたその通算親法人を合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人とするもの
2 貴社の欠損金額について
(1) 通算子法人で時価評価除外法人に該当する法人が、上記1(1)の一定の場合に該当しない場合で、かつ、上記1(1)の法人税法施行令第112条の2第4項に定める場合に該当しない場合において、上記1(1)に該当するときは、その通算子法人の一定の欠損金額は切り捨てられるところ、貴社は時価評価除外法人に該当し、貴社と持株会社及び貴社とP社のいずれについても、通算承認の効力が生じた後に共同で事業を行う場合として上記1(1)の同項に定める場合に該当せず、また、貴社は、通算事業年度の初年度に新たな事業を開始するため、上記1(1)に該当します。このため、上記1(1)の一定の場合に該当しない場合には、貴社の欠損金額は切り捨てられます。
(2) 上記1(1)の一定の場合に該当するためには、上記1(2)イ又はロのいずれかに該当する必要があるところ、本照会の場合、貴社及び持株会社が5年前の日後に設立され、持株会社の設立により貴社と持株会社との間に支配関係が生じていることから、貴社(通算子法人)と持株会社(通算親法人)との間に5年前の日から継続して支配関係がある場合に該当せず、上記1(2)イに該当しません。
また、上記1(2)ロに該当するかについてみると、貴社(通算子法人)及び持株会社(通算親法人)は、いずれも5年前の日後に設立された法人であり、貴社と持株会社との間に貴社の設立の日又は持株会社の設立の日のいずれか遅い日(持株会社の設立の日)から継続して支配関係がありますが、この「5年前の日後に設立された法人である場合」からは、上記1(2)ロ(イ)から(ハ)までの場合は除かれているため、これらのいずれかに該当する場合には、上記1(2)ロに該当しないこととなります。
(3) 上記1(2)ロ(イ)に該当するかについて、P社を他の通算法人とした場合、本件適格合併は、貴社(その通算子法人)を合併法人とし、P社(他の通算法人)との間に支配関係があるA社(他の内国法人)を被合併法人とする適格合併であり、貴社は、P社がA社との間に最後に支配関係を有することとなった日、すなわち、P社がA社の発行済株式の全てを取得した日(5年前の日後の日)以後に設立されており、上記1(2)ロ(イ)
Bに該当するため、上記1(2)ロに該当せず、上記1(1)に該当しません。
したがって、貴社の欠損金額は、法人税法第57条第8項の規定により通算承認の効力が生じた日以後に開始する各事業年度においてないものとされ、切り捨てられることとなります。
法人税法第57条第4項、第6項、第8項、第64条の9第1項、第7項、第9項、第10項、第64条の11第1項
法人税法施行令第112条の2第3項、第4項、第131条の15第4項
以上です。