【照会要旨】
当社は、平成30年4月1日以後に開始する事業年度(以下「本事業年度」といいます。)において、租税特別措置法上の特別償却制度の対象資産を取得したため、剰余金の処分により積立金として積み立てる方法(以下「積立金方式」といいます。)により特別償却準備金を積み立て、その積立額を損金の額に算入したいと考えています。
しかしながら、当社としては、その特別償却限度額相当額の全額を損金算入したいと考えているものの、税効果会計を適用しているため、特別償却準備金として積み立てられる金額は、その税効果相当額(繰延税金負債として計上された金額)を控除した額(純額)となってしまいます。
この場合、本事業年度における特別償却準備金の積立額を明らかにする明細表を確定申告書に添付することにより、積立金方式による積立額とこれに係る税効果相当額との合計額については、特別償却準備金として積み立てたものとして、当該税効果相当額についても本事業年度の損金の額に算入してよろしいでしょうか。
なお、この明細表としては、日本公認会計士協会の実務指針(平成30年2月16日に廃止された会計制度委員会報告第10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」。以下「実務指針」といいます。)において公表されていた「積立金方式による諸準備金等の種類別の明細表」(別図参照)(PDF/94KB)を想定しています。
【仕訳例】(法人税法上の特別償却限度額は1,000、法定実効税率は30%とします。)
法人税等調整額 300 / 繰延税金負債 300
繰越利益剰余金 700 / 特別償却準備金 700
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【回答要旨】
照会意見のとおり取り扱って差し支えありません。
(理由)
法人で、租税特別措置法上の特別償却に関する規定の適用を受けることができるものが、その適用を受けようとする事業年度において、特別償却に関する規定の適用を受けることに代えて、各特別償却に関する規定に規定する特別償却限度額以下の金額を損金経理の方法により特別償却準備金として積み立てたとき(その事業年度の決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法により特別償却準備金として積み立てたときを含みます。)は、その積み立てた金額は、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとされています(租税特別措置法第52条の3第1項)。
また、法人税法上の圧縮積立金(法人税法第42条等)や、租税特別措置法上の諸準備金(租税特別措置法第55条等)を積み立てる場合も概ね同様とされています。
一方、税効果会計を適用する場合に、積立金方式により圧縮積立金、特別償却準備金及びその他租税特別措置法上の諸準備金(以下「諸準備金等」といいます。)を積み立てるときは、諸準備金等に係る将来加算一時差異については繰延税金負債を計上し、諸準備金等の積立額は当該繰延税金負債の計上額を控除した額とされています(企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」第15項)。
このため、税効果相当額については諸準備金等を積み立てることができないこととなりますが、こうした場合であっても、従前は、税務上の諸準備金等の積立額を明らかにするために、諸準備金等の額とこれに関連する繰延税金負債額の種類別の明細表(以下「明細表」といいます。)を作成し、財務諸表とともに法人税申告書に添付するとする会計上の取扱いが設けられており(実務指針第46項)、税務上においてもこの明細表を法人税申告書に添付した場合には、税効果相当額についても損金の額に算入することを認めていました。
このたび、平成30年2月16日に企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」等が公表されたことに伴い、実務指針が廃止され(平成30年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。)、これに合わせ、明細表を法人税申告書に添付するという取扱いがなくなりました。このため、税効果相当額について損金の額に算入することが認められないのではないかという疑義が生じるところです。
しかしながら、法人としては、特別償却限度額相当額の全額を損金算入するとの意思があるにもかかわらず、税効果会計を適用しているため、特別償却限度額相当額まで特別償却準備金として積み立てができないということになります。
この点、明細表を法人税申告書に添付していれば、諸準備金等の積立額が明らかになることから、本事業年度においても、明細表を法人税申告書に添付した場合には、積立金方式による諸準備金等の積立額とこれに係る税効果相当額との合計額については、特別償却準備金等として積み立てたものとして取り扱われます。
法人税法第42条等
租税特別措置法第52条の3第1項、第55条等
以上です。