ある法人の新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの職域接種は、ワクチン接種事業の実施主体である市町村から委託を受け、接種1回当たり 2,070 円(税抜き)を基本として市町村から委託料を受領することとしていました。
接種会場の使用料、接種会場の設営費用(備品のリース費用を含みます。)、診療所の産業医以外の医師・看護師等の派遣を受けるための費用など、接種会場の準備のために要する費用(以下「会場準備費用」といいます。)が生じました。
また、職域接種の対象者は、①法人の事業所において勤務する役員、従業員及びこれらの者と同居する親族でワクチン接種を希望する者(以下「従業員等」といいます。)並びに②関連会社の従業員等のほか、③法人の取引先の従業員等とする場合があります。
法人が、ワクチン接種事業の受託に係る委託料収入を上回る費用負担が生じた場合でも関連会社及び取引先に負担を求めることは予定していません。
この場合、会場準備費用の額の一部は法人税法上の寄附金の額又は交際費等の額に該当するでしょうか。 なお、接種会場の近隣住民で接種を希望する者を対象に追加した場合には、法人税 法上の取扱いは変わるのでしょうか。
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■ このような職域接種のため、法人が負担した会場準備費用の額は、関連会社や取引先に負担を求めないとしても、法人税法上の寄附金の額又は交際費等の額のいずれにも該当しないと考えられます。
■ 新型コロナワクチンの接種については、予防接種法の規定に基づき市町村(特別区を含みます。以下同じです。)において実施するものとされており、職域接種は、この市町村において実施するワクチン接種事業について、
①市町村から委託を受けた企業等が実施する形態(企業内診療所において実施)又は②市町村から委託を受けた外部の医療機関に企業等が依頼することにより実施する形態(外部の医療機関が企業等に出張して実施するなど)とされています。
■ このケースの職域接種は、①の形態で行われるものと考えられますが、この場合、法人が市町村において実施するワクチン接種事業に係る業務(以下「受託業務」といいます。)の委託を受け、その委託の対価(2,070 円(税抜き)×接種実施回数)を得ることとなります。
会場準備費用を含む受託業務の実施に必要な費用が委託の対価を上回る場合には、法人に費用負担が生ずることになりますが、この場合の費用負担は、法人の従業員等のほか、関連会社及び取引先の従業員等もワクチン接種を受けることで社内の新型コロナウイルス感染症の感染拡大が防止され、法人の今後の業務遂行上の著しい支障の発生防止のため、つまり、法人の業務遂行に必要な費用の負担と考えられます。
そのため、法人が関連会社や取引先に負担を求めないとしても、法人税法上の寄附金又は交際費等には該当しないと考えられます。
■ また、②の形態においては、企業から依頼を受けた外部の医療機関が市町村と委託契約を締結し、委託の対価も医療機関に支払われることとなります。
医療機関における受託業務の実施に必要な費用が委託の対価を上回るなどの場合においては、企業と医療機関の契約内容により、企業に会場準備費用などの負担が生ずる可能性があります。
この場合の会場準備費用などの負担は、①の形態で行われるものと同様に、自社の従業員等のほか、関連会社及び取引先の従業員等もワクチン接種を受けることで社内の新型コロナウイルス感染症の感染拡大が防止され、企業の今後の業務遂行上の著しい支障の発生防止のため、つまり、企業の業務遂行に必要な費用の負担と考えられます。
そのため、企業が関連会社や取引先に負担を求めないとしても、その会場準備費用は法人税法上の寄附金又は交際費等には該当しないと考えられます。
■ なお、職域接種の対象に、接種会場の近隣住民で希望する者を追加する場合であって も、上記の取扱いが変わるものではありません。
以上です。