たとえば、個人で食料品の小売販売をしている人が、売上げの一部を医療機関に寄附する取組を始めることにした場合に、
(1)指定商品の売上金額の一定割合を寄附金額とすること
(2)寄附先
(3)寄附日 など
をあらかじめ設定し、指定商品を購入するお客様にご理解いただけるよう店内ポスターやホームページなどで広く一般に周知するとともに、寄附をした後には、その旨も同様に周知することとしていました。
そして、予定どおり医療機関に寄附をした場合、この支出は、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできるのでしょうか。
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医療機関に寄附した金額が、事前に広く一般に周知していた取組によるものであることが明らかである場合に限り、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することができます。
所得税法上、必要経費とされるのは、収入金額を得るため直接要した費用と販売費・一般管理費等の所得を生ずべき業務について生じた費用とされています(所得税法37条1項)。
この場合、商品の販売時において、所定の日に売上金額の一定割合の金額を指定された医療機関に寄附することを店内ポスターなどで広く一般に周知していたとのことですので、あなたが始めた取組は、新型コロナウイルス禍の下で社会的に必要とされる医療機関を支援する目的のほかに、集客を目的とした一種の広告宣伝としての効果を有しているものと認められます。
また、顧客が指定商品を購入する際には、あなたと顧客との間で、この取組(取引条件)に合意していたものと考えられますので、あなたには、売上の一部から所定の金額を医療機関に寄附する義務が生じていることになります。
したがって、医療機関に寄附をしたことによる支出は事業の遂行上必要なものとして生じたものと考えられますので、その支出は、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することができます。
なお、あらかじめ周知する内容が不明確である場合など、次のような場合には、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入することはできません。
①周知する内容を”売上げの一部を寄附します”としか示していない場合(寄附金額が不明確)
②周知する内容を”医療機関に寄附します”としか示していない場合(寄附先が不明確)
③周知内容と異なる内容の寄附を行っている場合(事業の遂行上必要かどうか不明確)
※ 個人事業主が支出した寄附金で、必要経費に算入されないものについては、事業主個人の家事上の経費になります。家事上の経費に該当する寄附の寄附先が国や地方公共団体等の寄附金(税額)控除の対象である場合には、控除の適用を受けることができます。
以上です。