たとえば、介護老人福祉施設を有する法人が、緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業に該当し、休業することなく事業を継続していた場合、社会的な使命に応えるためとはいえ、緊急事態宣言中に事業を継続する中で、従業員には新型コロナウイルス感染症の感染リスクといった平常時には感じ得ない相当な不安を抱えながらも懸命に事業に従事してもらっていたとします。
そこで、当該法人は、社内規程である慶弔基準を改定し、「新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言下において介護サービスを実施する従業員については、5万円の見舞金を支給する。」こととし、この基準に従って支給することとしました。
この見舞金は、非課税所得に該当し、給与等として源泉徴収は必要なのでしょうか。
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このような場合の見舞金は、非課税所得に該当しますので、給与等として源泉徴収する必要はありません。
新型コロナウイルス感染症に関連して従業員等が事業者から支給を受ける見舞金が、次の3つの条件を満たす場合には、所得税法上、非課税所得に該当します(所得税法9条1項十七号)。
① その見舞金が心身又は資産に加えられた損害につき支払を受けるものであること【条件①】
② その見舞金の支給額が社会通念上相当であること【条件②】
③ その見舞金が役務の対価たる性質を有していないこと【条件③】
※ 緊急事態宣言が解除されてから相当期間を経過して支給の決定がされたものについては、そもそも「見舞金」とはいえない場合がありますので、注意が必要です。
【条件①について】
心身に加えられた損害につき支払を受けるものの具体例は、次のとおりです。
イ 従業員等やその親族が新型コロナウイルス感染症に感染したため支払を受けるもの
ロ 緊急事態宣言の下において、事業の継続を求められる事業者(注1)の従業員等で次のいずれにも該当する者が支払を受けるもの(注2)
・ 多数の者との接触を余儀なくされる業務など新型コロナウイルス感染症の感染リスクの高い業務に従事している者
・ 緊急事態宣言がされる前と比較して、相当程度心身に負担がかかっていると認められる者
(注1) 事業の継続が求められる事業者に該当するかどうかの判定に当たっては、新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(令和2年3月 28 日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)を参考にしてください。
(注2) 緊急事態宣言がされた時から解除されるまでの間に業務に従事せざるを得なかったことに基因して支払を受けるものに限ります。
【条件②について】
見舞金の支給額が社会通念上相当であるかどうかは、次の点を踏まえ判断することになります。
イ その見舞金の支給額が、従業員等ごとに新型コロナウイルス感染症に感染する可能性の程度や感染の事実に応じた金額となっており、そのことが事業者の慶弔規程等において明らかにされているかどうか。
ロその見舞金の支給額が、慶弔規程等や過去の取扱いに照らして相当と認められるものであるかどうか。
【条件③について】
例えば、次のような見舞金は役務の対価たる性質を有していないものには該当しないことになります。
イ 本来受けるべき給与等の額を減額した上で、それに相当する額を支給するもの
ロ 感染の可能性の程度等にかかわらず従業員等に一律に支給するもの
ハ 感染の可能性の程度等が同じと認められる従業員等のうち特定の者にのみ支給するもの
二 支給額が通常の給与等の額の多寡に応じて決定されるもの
したがって、先の「見舞金」については、上記条件①から③までを満たすものと考えられますので、非課税所得に該当し、給与等として源泉徴収する必要はありません。
以上です。