《企業がマスクを取引先等に無償提供した場合の取扱い》
マスク等の無償提供が、新型コロナウイルス感染症に関する対応として、 緊急、かつ、感染症の流行が終息するまでの間に限って行われるものであり、次の条件 を満たすものであれば、事業遂行上、必要な経費と考えられますので、その提供に要する費用(マスク等の購入費用、送料等)の額は、寄附金以外の費用に該当します。
① 提供を行う取引先等において、マスクの不足が生じていることにより業務の遂行上、著しい支障が生じている、又は今後生じるおそれがあること
② その取引先等が業務を維持できない場合には、貴社において、操業が維持できない、営業に支障が生じる、仕入れ等が困難になるといった、貴社の業務に直接又は 間接的な影響が生じること
なお、上記の①及び②の条件を満たすものであっても、その提供先において、無償提供したマスク等が転売されているといった事実がある場合には、事業遂行上、必要な経費とは認められませんので、その提供に要する費用は、税務上、寄附金に該当し ます。
《賃貸物件のオーナーが賃料の減額を行った場合》
企業が、賃貸借契約を締結している取引先等に対して賃料の減額を行った場合、その 賃料を減額したことに合理的な理由がなければ、減額前の賃料の額と減額後の賃料の額との差額については、原則として、相手方に対して寄附金を支出したものとして税務上、 取り扱われることになります。
しかしながら、賃料の減額が、例えば、次の条件を満たすものであれば、 実質的には取引先等との取引条件の変更と考えられますので、その減額した分の差額については、寄附金として取り扱われることはありません。
① 取引先等において、新型コロナウイルス感染症に関連して収入が減少し、事業継続 が困難となったこと、又は困難となるおそれが明らかであること
② 貴社が行う賃料の減額が、取引先等の復旧支援(営業継続や雇用確保など)を目的 としたものであり、そのことが書面などにより確認できること
③ 賃料の減額が、取引先等において被害が生じた後、相当の期間(通常の営業活動を 再開するための復旧過程にある期間をいいます。)内に行われたものであること
また、取引先等に対して既に生じた賃料の減免(債権の免除等)を行う場合について も、同様に取り扱われます。
なお、賃料の減免を受けた賃借人(事業者)においては、減免相当額の受贈益が生じ ることになりますが、この場合であっても、事業年度(個人の場合は年分)を通じて、 受贈益を含めた益金の額(収入金額)よりも損金の額(必要経費)が多い場合には課税 が生じることはありません。
この取扱いは、テナント以外の居住用物件や駐車場などの賃貸借契約においても同様 です。
《企業が復旧支援のためチケットの払い戻しを辞退した場合》
企業が、契約上払い戻し可能とされているチケットについて、その払い戻しを辞退した場合、税務上、その払戻請求権の放棄による経済的利益の供与の額は寄附金の額に該当します。
しかしながら、チケットの払戻請求権の放棄(債権の免除等)が、次の 条件を満たすものであれば、その放棄したことによる損失の額は、寄附金以外の費用に該当します。
① 債権の免除等を行う相手先が、貴社の取引先等(得意先、仕入先、下請先、特約店、 代理店等のほか、実質的な取引関係にあると認められる者を含みます。)であること
② 新型コロナウイルス感染症に関連して相手先に生じた被害からの復旧支援を目的 としたものであること
③ 債権の免除等が、相手先において被害が生じた後、相当の期間(通常の営業活動を 再開するための復旧過程にある期間をいいます。)内に行われたものであること
④ その債権の免除等が、単なる払い戻しの請求漏れではなく、復旧支援の為に行われ たことが書面などにより確認できること
《業績が悪化した場合に行う役員給与の減額》
たとえば、新型コロナウイル ス感染症の感染拡大防止の観点から、イベント等の開催中止の要請があったことで、 今後、数か月間先まで開催を予定していた全てのイベントがキャンセルとなり、その結果、予定していた収入が無くなり、毎月の家賃や従業員の給与等の支払いも 困難な状況であることから、役員給与の減額を行ったとします。
法人税の取扱いでは、年度の中途で役員給与を減額した場合、定期同額給与に該当せず、損金算入が認められないケースもありますが、このような事情によって役員給与を減額した場合、その役員給与は定期同額給与に該当するでしょうか。
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このような役員給与の減額改定については、業績悪化改定事由による改定に該当するものと考えられます。
したがって、改定前に定額で支給していた役員給与と改定後に定額で支給する役員給与は、それぞれ定期同額給与に該当し、損金算入されます。
法人税の取扱いにおける「業績悪化改定事由」とは、経営状況が著しく悪化したこと などやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいいますので、このように、業績等が急激に悪化して家賃や給与等の支払いが困難となり、取引銀行や株主 との関係からもやむを得ず役員給与を減額しなければならない状況にある場合は、この 業績悪化改定事由に該当することになります。
《業績が悪化が見込まれるために行う役員給与の減額》
たとえば、新型コロナウイルス感染症の影響により、外国からの入国制限や外出自粛要請が行われたことで、主要な売上先である観光客等が減少し、そのため、 当面の間は、これまでのような売上げが見込めないことから、営業時間の短縮や従業員の出勤調整といった事業活動を縮小する対策を講じていたとします。
また、いつになれば、観光客等が元通りに回復するのかの見通しも立っておらず、 今後、売上げが更に減少する可能性もあるため、更なる経費削減等の経営改善を図る必要が生じています。
一方で、従業員の雇用や給与を維持するため、急激なコストカットも困難であることから、経営判断として、まずは役員給与の減額を 行うことを検討しています。
このような場合、法人税の取扱上、年度の中途で役員給与を減額した場合にその損金 算入が認められるのは、経営が著しく悪化したことなど、やむを得ず減額せざるを得 ない事情(業績悪化改定事由)がある場合に限られると聞いています。 そこで、このような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由による 改定に該当するのでしょうか。
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このような役員給与の減額改定について、現状では、売上などの数値的指標が著しく 悪化していないとしても、新型コロナウイルス感染症の影響により、人や物の動きが停滞し、この会社の営業を行う地域では観光需要の著しい減少も見受けられるところです。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が防止されない限り、減少した観光客等 が回復する見通しも立たないことから、現時点において、経営環境は著しく悪化しているものと考えられます。
そのため、役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から 判断して、急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化する ことが不可避と考えられます。
したがって、このような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由によ る改定に該当します。
以上です。
PS.
TACについてですが、各地の休業要請が解除された場合には、講義再開されるようです。
たとえば大阪府は5月15日に発表があった場合、翌週の月曜日である5月18日以降、順次講義が再開されます。
TACの各校舎は「1,000㎡を超える(特措法による要請)学習塾等の施設使用制限」が該当します。
いつ休業要請が解除されるかわかりませんので、詳しくは、5月15日以降の大阪府の発表後のTACのホームページをご覧ください。