今回の申告期限等の延長の対象(申告所得税・贈与税・個人事業者の消費税)とされていない手続(法人税や相続税、酒税など)については、従来どおりの期限となります。
しかし、従来からある制度により、地震等の自然災害、火災等の人為的な災害、申告等をする方の重傷病など、災害その他やむを得ない理由により、申告・納付等を期限までに行うことが困難 な事情がある方(企業)については、税務署へ申請書を提出すると、申告期限等が個別に延長される制度があります。
※ 個別の申請により延長が認められる「やむを得ない理由」の具体的な事例については、次のようになります。
・新型コロナウイルス感染症(以下、この問では「感染症」といいます。)に関しては、
これまでの災害時のように資産等への損害や帳簿書類等の滅失といった直接的な被害が 生じていないものの、感染症の患者が把握された場合には濃厚接触者に対する外出自粛 の要請等が行われるなど、自己の責めに帰さない理由により、その期限までに申告・納付等ができない場合も考えられます。
・今般の感染症に関しては、これまでの災害時に認められていた理由のほか、例えば、 次のような理由により、申告書や決算書類などの国税の申告・納付の手続に必要な書類 等の作成が遅れ、その期限までに申告・納付等を行うことが困難な場合には、個別の申 請による期限延長(個別延長)が認められることとなります(国税通則法 11 条、国税通 則法施行令3条3項、4項)。
※ この個別延長を申請する際には、申告・納付等を行うことができない状況を確認させていただくこと になりますので、申請者の状況、税理士の関与状況、部署の閉鎖や業務制限の状況、緊急措置の概要な ど、参考となる具体的な事実を申請書に記載してください。
〔個人・法人共通〕
① 税務代理等を行う税理士(事務所の職員を含みます。)が感染症に感染したこと
② 納税者や法人の役員、経理責任者などが、現在、外国に滞在しており、ビザが発給されない又はそのおそれがあるなど入出国に制限等があること
③ 次のような事情により、企業や個人事業者、税理士事務所などにおいて通常の業務 体制が維持できない状況が生じたこと
*経理担当部署の社員が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事 実がある場合など、当該部署を相当の期間、閉鎖しなければならなくなったこと
*学校の臨時休業の影響や、感染拡大防止のため企業が休暇取得の勧奨を行ったこ とで、経理担当部署の社員の多くが休暇を取得していること
〔法人〕
④ 感染症の拡大防止のため多数の株主を招集させないよう定時株主総会の開催時期 を遅らせるといった緊急措置を講じたこと
〔個人〕
⑤ 納税者や経理担当の(青色)事業専従者が、感染症に感染した、又は感染症の患者 に濃厚接触した事実があること
⑥ 次のような事情により、納税者が、保健所・医療機関等から外出自粛の要請を受け
たこと
*感染症の患者に濃厚接触した疑いがある
*発熱の症状があるなど、感染症に感染した疑いがある
*基礎疾患があるなど、感染症に感染すると重症化するおそれがある
※ 上記以外にも、個別の申請により申告期限等が延長される場合があります。
~期限の個別延長の手続~
災害その他やむを得ない理由により、申告期限等の延長を受けようとする場合には、災害その他やむを得ない理由のやんだ日から相当の期間内(おおむね1か月以内)に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出していただければ、税務署長等が 指定した日(災害等のやんだ日から2か月以内)まで期限が延長されます。
なお、申請書の提出に代えて、申告等を行う際に、次の内容を申告書等の余白に付記することもできます。
①申告・納付等の期限の延長を申請する旨
②新型コロナウイルス感染症に関連して申告・納付等を行うことができない具体的な事実
以上です。