令和元年12月に国税庁の新しいFAQが公表されましたので、当ブログで数回に分けて特集しています。全部で32項目ありますが、今日は10番目の項目についてです。
ビットコインはBTCと表現されています。
(問)
次のとおり、継続して同じ種類の仮想通貨を売買しました。この場合の仮想通貨の売却に 関する譲渡原価について教えてください。
(例) 4月1日に初めてビットコインを購入して以降、内訳のとおり、数度にわたり購入 と売却を行い、1年間の売却額(数量)の総額は、5,295,000 円(5BTC)、購入額(数量)の総額は、4,037,800 円(6.5 BTC)でした。
(内訳)
・ 4月1 日 4BTC を 1,845,000 円で購入(保有数量4BTC)
・ 6月 20 日 2BTC を 1,650,000 円で購入(保有数量6BTC)
・ 7月 10 日 2BTC を 2,400,000 円で売却(保有数量4BTC)
・ 9月 15 日 0.5 BTC を 542,800 円で購入(保有数量 4.5BTC)
・ 11 月 30 日 3BTC を 2,895,000 円で売却(保有数量 1.5BTC)
(注)上記取引において仮想通貨の売買手数料については勘案していない。
(答)
上記(例)の場合、総平均法においては 3,106,000 円、移動平均法においては 3,080,200 円 が、譲渡原価となります。
複数の仮想通貨を継続的に売買する方がその売却等に係る所得金額を計算する際には、譲渡原価の計算を行う必要があります。
譲渡原価は、仮想通貨の種類(名称:ビットコインやリップルなど)ごとに、以下の様に計算します。
(前年から繰り越した年初(1月1日)時点で保有する仮想通貨の評価額 + その年中に取得した仮想通貨の取得価額の総額)-(年末(12 月 31 日)時点で保有する仮想通貨の評価額)= 譲渡原価
※ 「年末時点で保有する仮想通貨の評価額」とは?
(その保有する仮想通貨の年末時点での1単位当たりの取得価額)×(年末時点で保有する数量)
※ 「年末時点 での1単位当たりの取得価額」とは?
「総平均法」又は「移動平均法」のいずれかの評価方法により算出することとされています。
上記(例)の場合の譲渡原価は、その評価方法の別に次のとおりとなります。
【総平均法】 同じ種類の仮想通貨について、年初時点で保有する仮想通貨の評価額とその年中に取得した仮想通貨の取得価額との総額との合計額をこれらの仮想通貨の総量で除して計算した価額を「年末時点での1単位当たりの取得価額」 とする方法をいいます。
【移動平均法】 同じ種類の仮想通貨について、仮想通貨を取得する都度、その取得時点において保有している仮想通貨の簿価の総額をその時点で保有している仮想通貨の数量で除して計算した価額を「取得時点の平均単価」とし、その年12 月31日から最も近い日において算出された「取得時点の平均単価」を「年末時点での1単位当たりの取得価額」とする方法をいいます。
【総平均法による計算】
以下の計算式のとおり、「年末時点での1単位当たりの取得価額」は 621,200 円となり、「年末時点で保有する仮想通貨の評価額」は 931,800 円になります。
したがって、譲渡原価は、3,106,000 円になります(4,037,800 円-931,800 円)。
<計算式>年末時点での1単位当たりの取得価額は、次の分数式により計算します。
(注)前年から繰り越した仮想通貨がある場合には、分母と分子のそれぞれにその価額、数量を加算します。
1年間に取得した同一種類(名称)の仮想通貨の取得価額の総額4,037,800円
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1年間に取得した同一種類(名称)の仮想通貨の数量6.5BTC
=年末時点の1単位当たりの取得価額621,200円
よって、年末時点で保有するビットコインの評価額は、次のようになります。
621,200円 × 1.5BTC = 931,800円
【移動平均法による計算】
以下の計算式のとおり、「年末時点での1単位当たりの取得価額」は 638,400 円となり、「年末時点で保有する仮想通貨の評価額」は 957,600 円になります。
したがって、譲渡原価は、3,080,200円になります(4,037,800 円-957,600 円)。
<計算式>
(1) 取得時点(4月1日)の平均単価
種類(名称)の異なる仮想通貨を取得する都度、次の分数式により平均単価の見直しを行います。
(注1) 前年から繰り越した仮想通貨がある場合には、①と②にそれぞれにその価額、数量を加算します。
(注2) その年 12 月 31 日から最も近い日において算出された「取得時点の平均単価」が「年末時点での 1単位当たりの取得価額」となります。
取得時点(4/1)で保有する同一種類(名称)の仮想通貨の簿価の総額 1,845,000円
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取得時点で保有する同一種類(名称)の仮想通貨の数量 4BTC
= 取得時点(4月1日)の平均単価 461,250円
(2) 取得時点(6月20日)の平均単価
取得時点(6/20)で保有する同一種類(名称)の仮想通貨の簿価の総額 3,495,000円
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取得時点で保有する同一種類(名称)の仮想通貨の数量 6BTC
= 取得時点(6月20日)の平均単価 582,500円
分子:461,250円 × 4BTC + 1,650,000円=3,495,000円
(3) 取得時点(9月15日)の平均単価
取得時点(9/15)で保有する同一種類(名称)の仮想通貨の簿価の総額 2,872,800円
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取得時点で保有する同一種類(名称)の仮想通貨の数量 4.5BTC
= 取得時点(9月15日)の平均単価 638,400円
分子:582,500円 × 4BTC + 542,800円=2,872,800円
(4) 年末時点で保有するビットコインの評価額
年末時点での1単位当たりの取得価額(上記最後の平均単価638,400円) × 年末時点で保有する数量1.5BTC = 957,600円
となります。
※ 仮想通貨の譲渡原価を含め、その売却等に係る所得金額の計算については、仮想通貨交換業者から送付される「年間取引報告書」を基に「仮想通貨の計算書(総平均法用・移動平均法用)」を作成することで、簡便に行うことができます(2/24に当ブログに掲載予定)。
「仮想通貨の計算書(総平均法用・移動平均法用)」は、国税庁ホームページに掲載されていますのでご参照ください。
【根拠規定】
所法48の2
所令 119 の2
以上です。