相続により、被相続人(故人)に支給されるべきであった退職手当金や功労金などを受け取った場合は、相続税の課税対象になります。
1 相続財産とみなされる退職手当金等
被相続人の死亡により、被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(これらを「退職手当金等」といいます。)を受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。
(注)
1 退職手当金等とは、受け取る名目にかかわらず実質的に被相続人の退職手当金等として支給される金品をいいます。
したがって、現物(金銭以外の物)で支給された場合も含まれます。
2 死亡後3年以内に支給が確定したものとは次のものをいいます。
(1) 死亡退職で支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
(2) 生前に退職していて、支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
2 非課税となる退職手当金等
相続人が受け取った退職手当金等はその全額が相続税の対象となるわけではありません。
全ての相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)が取得した退職手当金等を合計した額が、非課税限度額以下である場合には課税されません。
非課税限度額は次の式により計算した額です。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
なお、相続人以外の人が取得した退職手当金等には、非課税の適用はありません。
(注)
1 「法定相続人の数」とは、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。
2 法定相続人の中に養子がいる場合の法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。
法定相続人の数に含める養子の数の制限については、後ほど、法定相続人の解説の時に説明させていただきます。
3 課税される退職手当金等
全ての相続人が受け取った退職手当金等を合計した額が非課税限度額を超えるときの超える部分の金額及び相続人以外の者が受け取った退職手当金等の金額が相続税の課税対象になります。
相続人が受け取った退職手当金等のうち課税される退職手当金等の金額について、具体的には、次の算式により計算します。
<算式>
その相続人が受取った退職手当金等の金額-非課税限度額 ✖その相続人が受取った退職手当等の金額÷すべての相続人が受け取った退職手当等の合計額 = その相続人の課税される退職手当金等の金額
(相法3、12、15、相基通3-18、3-30、3-31)
たとえば、事例で計算しますと、以下のとおりとなります。
【事例】
被相続人の死亡によって退職手当金等を次のとおり受け取った場合
退職手当金等の受取人 金額
A(配偶者) 2000万円
B(長男) 1000万円
C(長女、相続を放棄) 500万円
合計3500万円
(1) 非課税限度額の計算
500万円 ✖ 3人(法定相続人の数)=1,500万円
(注) Cは相続を放棄していますが、法定相続人の数には算入します。
(2) 各人の非課税金額の計算
A 1500万円✖(2000万円÷(2000万円+1000万円))=1000万円
B 1500万円✖(1000万円÷(2000万円+1000万円))=500万円
C 相続を放棄していますから、非課税金額はありません。
(3) 各人の課税価格に算入される退職手当金等の額
A (取得退職手当金額)2000万円-(非課税金額)1000万円=1000万円
B (取得退職手当金額)1000万円-(非課税金額)500万円=500万円
C (取得退職手当金額)500万円-(非課税金額)0万円=500万円
以上です。